この物語はフィクションです。
登場人物と近しい人がいましても、それは幻(ry 実在の人物とはまったく関係はありません(多分)。 楽しんでいただけたら幸いですm(__)m 今回、登場人物多いので、余計に長くなっております(T_T) サスペンス小説(?)なんて初めてだから、お目汚しはご勘弁です。 ------------------------- 見慣れない写真を見て、彼は小首をかしげた。 「あれ~? おいどん、こんな写真撮ってないおー」 愛用のカメラ「撮れるんデス」を持ち上げ、しげしげと見つめる。 特に故障個所などありようもないそれに、彼は更に首をかしげてしまう。 写真に写し出されたのは、鬱蒼と茂る木々の合間からのぞく白い鎧と黒い鎧。何故か橙色の物体が見える。 「ふむー、これは一体……」 彼はヴァナ・ディールを騒がせるパパラチとして名を馳せているタルタル。そんな彼ですら、今はまだ気づかなかった。よもやその写真が、これからおこるであろう悲哀に満ちた事件の鍵になることを……。 例によってその青年は下層の占い屋の前に佇んでいた。 「ひまだ……」 溜め息交じりとともに呟くと、不意にかかる影。のんびりと顔を上げると、そこには一人の女性。 「所長! ひまだひまだって言うくらいなら、ビラ配り手伝ってくれませんか?!」 亜麻色の髪をポニーテールにしているのが印象的な、快活な美人。そんな相手に、所長と呼ばれた男性・髷はあきれたように視線を流した。 「君ねぇ……探偵たるもの、事件が飛び込んでくるのを待つのが信条。ビラ配りなど無作為な行為は、探偵の地位を脅かし……」 「そんなこといっているから、姉と妹に逃げられるんじゃないんですか?」 「え? あの二人、逃げたの?」 「そんなことわからずに、何が偉大な名探偵ですか! とっととビラ配り手伝わないと、私も退職金がっぽりもらって、逃げますよ?」 「がっぽりって……うちは貧乏探偵事務所。金などあるわけがない」 豪快に笑う男に、女性は頭を抱えたくなった。自分もやはりあの時に愛想をつかして逃げてしまうのがよかったかもしれない。 後悔先立たず―――己と瓜二つな姉と妹のことを想いだし、彼女はひっそりと心の中で涙した。 「撮れるんデス」を丁寧に磨いていた手が不意にとまる。 「ん? ふん、ふん。わかった、すぐいく!」 傍から見ている分には独り言、もしくは火星の電波を受信しちゃう危ない子。にしか見えないが、幸いにして、ここには誰もいない。 彼は「撮れるんデス」を机の上に置くと、急いでステテコ姿に着替えた。そしておもむろに、外へ駆け出すと、庭に向かって、口笛を吹く。 アオーン! 大きな遠吠えと同時に、紫がかった巨大な犬が現れる。 「ジャグナー森林だ。急いでおくれ」 言葉と同時に、飛び乗ろうとする。が、残念なことにそこには踏み台たるべき、タルタルスツールが存在しなかった。 ジャンプしてかろうじて犬の毛をつかみ、そこからよじ登ろうとしたが、いかんせん短い手だったのが、不幸の始まり。どうにもならない状態のまま、過ぎること数分。 「こらぁ! フェンリル!! おまえ、座っておいどんが乗りやすいようにするとか、気がきかないのか!!」 じれにじれてステテコ姿のタルタルが叫ぶと、フェンリルはじーっと、彼を見据えた。 「な、何よ……おいどん、薄口でも主人に代わりはないでつ!」 片手で毛につかまりながら、それでも気丈に言い放つタルタルに、フェンリルは首をふる。が、その巨大さのあまり、ぶら下がっている相手には強烈な振動が伝わった。 「のーーーー!!!」 フェンリルのわかっているのかいないのか、その不明な行動により……偉大なるパパラチは、夜空に輝く星になった―――。最後まで、愛用の「撮れるんデス」は手放さずに。 一人のタルタルの元へ、手紙が届いた。 「およ?」 薄茶のサングラスをかけなおし、しげしげと手紙を見つめる彼。一通り読み終えると、傍らに控えていた女性に声をかけた。 「あれ、妹は?」 いるべき姿が一人しかいないことに、彼は不審がる。しかし相手の女性はにっこりと微笑したまま、 「タバコ切れたとかいって買出しにいきましたよ」 「あのー、今も一応勤務時間……」 「どうかしました?」 「いえ、何でもありません……」 相手の笑みに気圧され、彼はひっそりとため息をついた。そんな相手を見ながら、彼女も己の数奇な運命を儚む。 どうして、こう無能者のトップばかりに就職してしまうんだろうか、と。 そんなお互いの心境は、とりあえずおいとくとして、タルタルはあらためて告げた。 「妹さん帰ってきてからでいいから、ジャグナー森林にむかって」 「ジャグナー? なんでまたそんなところに」 「うちに保険かけてくれてるお得意さんがらみの話だから。とりあえず、状況検分だけお願い」 「ちなみにそのお得意さんのお名前は?」 「ええとねぇ、腹黒騎士~」 彼は小さな手にもった手紙を彼女へと示した。 タバコを買いにきた彼女は、不意に頭にかかった紙切れに、悪態をついた。 「ったく……」 近年の様々な環境の変化により、すっかりやさぐれてしまった彼女。しかし過去に美人三姉妹と呼ばれたその風貌に衰えはない。 紙を手に取ろうとした瞬間、階段上の人物と目があう。 「…お姉ちゃん…」 相手はなんと言っていいかと、視線をめぐらせていたが、それは呑気な青年の声に遮られた。 「あれー、三女ちゃん。久しぶり~」 できうることならば、二度と会いたくなかった相手。しかし同じ街に住処を構える者同士、それは叶わないことだったのかもしれない。だからこそ、彼女は冷ややかな眼差しのまま、一言だけ告げた。 「あんた、まだいたの?」 彼女と瓜二つの顔を持つ相手も、苦笑するしかなかった。 「さーて、どうしたもんかなぁ」 木々に囲まれた中、彼は途方にくれた声を出した。 緑帽子についた羽を手でさすりながら、視線を地面へと巡らせた。 「とりあえず関係者には連絡したから、あとは引き合わせて……」 残りの自分の仕事を思い浮かべて嘆息をつく。 「何も俺のパトロール中にこんなこと起きなくても……」 不謹慎なれど、そう思わずにいられない感情。今日を無事にすぎれば、ようやく半年振りの休暇だったというのに。 厄日かも。 彼は少し離れたところに座り込み、目の前に突っ伏しているエルヴァーンを見て、もう一度ため息をついた。 美麗なミスラは肩を震わせていた。 怯えているような、その彼女には純白の鎧に身を包んだ男性が寄り添っている。 どこにでもありふれている民家はまだ昼間だというのに薄暗い。窓にかけられたカーテンが、外の光を拒んでいた。 「どうしたらいいの?」 ミスラは小さく、それでもはっきりと問う。 「大丈夫、僕がついてるよ」 「……だけど、だけど……」 「君は心配しなくてもいいから」 「まさか、こんなことになるなんて……」 取り乱しそうな相手をやんわりと諌め、彼は彼女の顔をあげさせる。 「何も不安に感じることはない。あいつなら、きっと……」 「ああ、でも……」 「僕はあいつ同様、君を護るためにあるのだから」 優しく響くその声音に、彼女はようやく頷く。そして意を決したように、立ち上がった。 「行くかい?」 「……ええ、行きましょう。ジャグナー森林に」 個々に紡がれた一本の糸は、運命の地にてようやく一つになろうとしていた。 <続く> --------------------- さて、ジャグナー森林で一体何がおきたのか?! 発見されたエルヴァーンの正体とは一体! 美人三姉妹の運命は? 哀れなタルタルに、平穏な休暇はくるのか? 髷探偵に出番はあるのか? 麗しいミスラと寄り添う青年の関係とは? 空に消えた、パパラチの明日は? そして腹黒旦那の台詞はあるのか! 謎が謎を呼ぶ愛憎劇の続編は次週アップ予定! ご期待ください!! : : : : : って、あおるだけあおって、どうする自分……orz (一応、次回で完結予定……)
by kyaokyawo
| 2004-08-28 23:10
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